労働問題96 管理職としての能力が低い社員を解雇する場合の注意点を教えて下さい。

 管理職としての能力が低いことが原因で部下を管理できない場合であっても直ちに退職勧奨したり解雇したりせず、当該社員の能力でも対応できるレベルの管理職に降格させるか、管理職から外して対応するのが原則です。
 ただし、地位を特定して高給で採用された社員に労働契約で予定された能力がなかった場合には、降格ではなく退職勧奨や解雇を検討することになります。地位特定者を解雇するにあたっては、地位を特定して採用された事実を主張立証する必要がありますので、労働契約書等の書面に明示しておくべきです。
 管理職として不適格であることを理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには、何月何日に管理職として不適格であることを示す事実があったのかを、当該事実があった当時の証拠により説明できるようにしておく必要があります。抽象的に「管理職として不適格である。」と言ってみてもあまり意味はありませんし、「彼が管理職として不適格であることは、周りの社員も、取引先もみんな知っている。」というだけでは足りません。
 会社関係者の陳述書や法廷での証言は、証拠価値があまり高くないため、紛争が表面化する前の書面等の客観的証拠がないと、何月何日にどのような管理職として不適格であることを示す事実があったのかを主張立証するのには困難を伴うことが多いというのが実情です。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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