問題社員87 能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは、どのように判断すればよろしいでしょうか?
能力不足を理由とした解雇が認められるかどうかは、基本的には労働契約で求められている能力が欠如しているかどうかによります。
単に思ったほど能力がなく、見込み違いであったというだけでは、解雇は認められません。
長期雇用を予定した新卒採用者については、社内教育等により社員の能力を向上させていくことが予定されているのですから、能力不足を理由とした解雇は、例外的な場合でない限り、認められません。
一般的には、勤続年数が長い社員、賃金が低い社員は、能力不足を理由とした解雇が認められにくい傾向にあります。
採用募集広告に「経験不問」と記載して採用した場合は、一定の経験がなければ有していないような能力を採用当初から有していることを要求することはできません。
特定の能力を有することが労働契約の条件とされて高給で採用された社員、地位を特定して高給で採用された社員に労働契約で予定された能力がなかった場合には、解雇が認められやすい傾向にあります。
ただし、解雇が比較的緩やかに認められる前提として、当該契約で求められている能力の内容、地位を特定して採用された事実を主張立証する必要がありますので、労働契約書等の書面に明示しておくべきです。
労働契約書等に明示されていないと、当該契約で求められている能力の内容、地位を特定して採用された事実の主張立証が困難となることがあります。
能力不足を理由とした解雇が有効と判断されるようにするためには、能力不足を示す「具体的事実」を立証できるようにしておく必要があります。
抽象的に「能力不足」と言ってみても、あまり意味はありません。
何月何日に能力不足を示すどのような具体的事実があったのか、記録に残しておく必要があります。
「彼(女)の能力が低いことは、周りの社員も、取引先もみんな知っている。」というだけでは足りません。
会社関係者の陳述書や法廷での証言は、証拠価値があまり高くないため、紛争が表面化する前の書面等の客観的証拠がないと、解雇の有効性を基礎付ける事実を主張立証するのには困難を伴うことが多いというのが実情です。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎