労働問題78 勤務成績、勤務態度が悪いことは本人が一番よく知っているはずだし、このことは社員みんなが知っているような場合であっても、証拠固めが必要だというのはどうしてですか?

 十分な証拠固めをしないまま、「彼の勤務成績、勤務態度が悪いことは、本人が一番良く知っているはずだ。このことは社員みんなが知っていて証言してくれるはずだから、裁判にも勝てる。」といった安易な考えに基づいて「問題社員」を解雇する事例が見られますが、訴訟になるような事案では、労働者側はほぼ間違いなく自分の勤務成績、勤務態度には問題がなかったと主張してきますし、経営者、社員等の利害関係人の証言は経営者が思っているほど重視されません。
 したがって、解雇に踏み切る前の時点で、解雇されてもやむを得ないと考えられるような具体的事実を説明することができるのかどうか、その事実を立証できるだけの客観的証拠が準備できているかどうかを確認する必要があります。
 そして、相手の言い分を聞かないことには、解雇されてもやむを得ないと考えられるような具体的事実があるのかないのかを確認することが難しいのが通常ですから、解雇に踏み切る前に、「問題社員」の言い分を十分に聴取し、使用者側が認識している事実関係と照らし合わせて、客観的にどのような事実が認定できるかを検討すべきと考えます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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