労働問題73 解雇が無効と判断された場合に支払う賃金(バックペイ)から、解雇された労働者が解雇期間中に他社で働いて得た収入(中間収入)や失業手当を控除することはできませんか?

 解雇期間中の中間収入(他社で働いて得た収入)がある場合、その収入が副業収入のようなものであって解雇がなくても取得できた(自社の収入と両立する)といった特段の事情がない限り、
 ① 月例賃金のうち平均賃金の60%(労基法26条)を超える部分(平均賃金額の40%)
 ② 平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)の全額
が控除の対象となります(米軍山田部隊事件最高裁第二小法廷昭和37年7月20日判決、あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決、いずみ福祉会事件最高裁第三小法廷平成18年3月28日判決)。
 控除しうる中間収入はその発生期間が賃金の支給対象期間と時期的に対応していることが必要であり、時期が異なる期間内に得た収入を控除することは許されません(あけぼのタクシー事件最高裁第一小法廷昭和62年4月2日判決)。
 解雇期間中に失業手当を受給していたとしても、失業手当額は控除してもらえません。
 単純化して、解雇期間中の賃金が月額30万円、平均賃金も月額30万円と仮定して説明すると、以下のとおりとなります。
 中間収入の額が平均賃金額の40%(12万円)を超えない場合、例えば他社で毎月10万円を稼いでいた場合には、30万円-10万円=20万円の賃金を毎月支払えば足りることになります。
 中間収入の額が平均賃金額の40%(12万円)を超える場合、例えば他社で毎月25万円を稼いでいた場合には、30万円-25万円=5万円の賃金を毎月支払えば足りることにはならず、平均賃金の60%(18万円)を毎月支払わなければならないことになりますが、平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(賞与等)がある場合には、その全額を対象として控除することができます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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