労働問題57 試用期間の法的性格を教えて下さい。

 試用期間には様々なものがあり、その法的性格は一様ではありません。
 三菱樹脂事件最高裁大法廷昭和48年12月12日判決(労判189号16頁)は、「試用契約の性質をどう判断するかについては、就業規則の規定の文言のみならず、当該企業内において試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかんをも重視すべきものである」と判示していますので、試用期間の法的性格については、「試用契約の下に雇用された者に対する処遇の実情、とくに本採用との関係における取扱についての事実上の慣行のいかん」等を重視して個別に判断していくことになります。
 同事件原判決が、「上告人の就業規則である見習試用取扱規則の各規定のほか、上告人において、大学卒業の新規採用者を試用期間終了後に本採用しなかった事例はかつてなく、雇入れについて別段契約書の作成をすることもなく、ただ、本採用にあたり当人の氏名、職名、配属部署を記載した辞令を交付するにとどめていたこと等の過去における慣行的実態に関して適法に確定した事実に基づいて、」「右雇用契約を解約権留保付の雇用契約と認め、右の本採用拒否は雇入れ後における解雇にあたる」と判断したことを同最高裁判決は「是認し得ないものではない。」とした上で、「被上告人に対する本採用の拒否は留保解約権の行使、すなわち雇入れ後における解雇にあたり、これを通常の雇入れの拒否の場合と同視することはできない。」と判断していますので、三菱樹脂事件と同様の事案における試用期間においては、解約権留保付の雇用契約が既に成立しており、本採用拒否は留保解約権の行使(解雇)と考えるべきことになります。
 一概には言えませんが、多くの企業における試用期間は解約権留保付の雇用契約が既に成立しており、本採用拒否は留保解約権の行使(解雇)に当たると考えられるものと思われます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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