労働問題539 懲戒解雇するかを検討するために一旦出勤停止の懲戒処分をした上で,懲戒解雇することはできますか?

 一つの非違行為に対して2回懲戒処分することはできませんので,懲戒解雇するかを検討するために一旦出勤停止の懲戒処分をした上で,懲戒解雇することはできません。
 しかし,懲戒処分としての出勤停止とは別に,業務命令として出勤停止や自宅待機を命じることができます。これは処分するかの調査または審議決定をするまでの間,就業を禁止する前置措置としての意味を持ちます。
 もっとも,業務命令としての出勤停止の場合は,懲戒処分としての出勤停止とは異なり,原則として出勤停止の間も賃金を支払う必要があります。
 したがって,ある懲戒事由を疑っていて,仮にその事実が判明し,懲戒解雇が相当と考えている場合には,まずは業務命令として出勤停止の措置をとった上で,事実の調査や審議決定をしましょう。その際,後になって労働者から一事不再理の原則について争われないためにも,業務命令としての出勤停止の措置である旨,書面等で明示しておくことが重要です。たとえば,就業規則に「懲戒に該当する行為があった者について,事実調査のため必要がある場合は,その処分が決定されるまでの間,自宅待機を命ずることがある」との定めを置き,業務命令としての出勤停止の措置の可能性があることを周知させることが考えられます。

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