労働問題536 懲戒処分の有効要件を教えてください。
懲戒処分の有効要件は,①就業規則の懲戒事由に該当すること,②処分が相当であること,③手続が相当であることです。
①の懲戒事由には経歴詐称,業務命令違反,職場規律違反,無断欠勤,会社物品の私用,私生活上の非行,二重就職・兼業規制などがあります。 懲戒処分時に使用者が認識していなかった非違行為は,原則として,当該懲戒処分が有効であることの理由にはできません。
②処分の相当性については,懲戒処分の種類を就業規則に明確に定める必要があります。懲戒処分の種類は,けん責,減給,降格,出勤停止,懲戒解雇等が考えられます。懲戒処分の内容をどのようにするかは使用者の裁量に委ねられていますが,使用者が不当に重い処分を選択した場合,権利の濫用として無効となります。懲戒処分が相当か否かについては,懲戒事由とされた行動の態様,動機,業務に及ぼした影響,企業の置かれている状況,損害の程度,労働者の態度,処分歴,使用者側の原因等を基に判断します。
③手続の相当性は,本人への弁明機会,賞罰委員会の開催,労働組合等の手続的保障をしていたかが問題となります。
懲戒処分が刑罰に類似する制裁罰としての性格を有することや,懲戒処分が労働者に対し与える不利益を鑑みると,規定の有無を問わず本人に弁明の機会を付与するのが妥当といえます。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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