労働問題493 賃金債権放棄の有効性の判断基準を教えて下さい。
シンガーソーイングメシーン事件最高裁昭和48年1月19日第二小法廷判決は、賃金である退職金債権を放棄する旨の意思表示の有効性に関し、「右全額払の原則の趣旨とするところなどに鑑みれば、右意思表示の効力を肯定するには、それが上告人の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない」とした上で、具体的事案の判断としては、「右事実関係に表れた諸事情に照らすと、右意思表示が上告人の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していたものということができるから、右意思表示の効力は、これを肯定して差支えないというべきである。」と結論づけています。
したがって、賃金放棄が有効であるというためには、それが労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならず、当該意思表示が労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足る合理的な理由が客観的に存在していたような場合は、それが労働者の自由な意思に基づくものであることが明確であると考えるべきことになります。