労働問題379 既発生の賃金債権の減額に対する同意の意思表示の効力を肯定するための要件を教えて下さい。
既発生の賃金債権の減額に対する同意の意思表示は、既発生の賃金債権の一部を放棄することにほかなりません。労基法24条1項に定める賃金全額払の原則の趣旨に照らせば、既発生の賃金債権を放棄する意思表示の効力を肯定するには、それが社員の自由な意思に基づいてされたものであることが明確でなければなりません(シンガーソーイングメシーン事件最高裁昭和48年1月19日第二小法廷判決参照)。
既発生の賃金債権の減額に対する同意(既発生の賃金債権の一部の放棄)があったといえるためには、それが、社員の自由な意思に基づいてされたものであることが明確でなければならないのですから、最低限、
① 同意書(放棄書)の取得
が必要です。
さらに、既発生の賃金債権の減額に対する同意(既発生の賃金債権の一部の放棄)により社員が被る具体的不利益を説明する書面を配布し、口頭でも丁寧に説明するなどの対応をして、
② 当該同意(放棄)が、社員の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在した
ということができるようにしておく必要があります。
①だけであれば自社で対応できると思いますが、②は難しいかもしれません。もっと詳しく②を検討したい場合は、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談下さい。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎