労働問題370 労働組合との間で賃金減額に関する労働協約を締結した場合、賃金減額の効力は非組合員にも及びますか。
労働協約締結による賃金減額の効力が及ぶのは、原則として労働協約を締結した労働組合の労働組合員に限られることになりますが、労働協約には、労組法17条により、一の工場事業場の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用されている他の同種労働者に対しても右労働協約の規範的効力が及ぶ旨の一般的拘束力が認められており、この要件を満たす場合には、賃金減額に反対する未組織の同種労働者に対しても労働協約の効力を及ぼし、賃金を減額することができます。
労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約を特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼし、賃金を減額することはできません(朝日海上火災保険(高田)事件最高裁平成8年3月26日第三小法廷判決)。少数組合に加入している組合員に対しては、労組法17条の一般的拘束力は及びません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎