労働問題369 労働組合との間で賃金に関する労働協約を締結した場合の組合員に対する効力を教えて下さい。
労働組合との間で賃金に関する労働協約を締結した場合、それが組合員にとって有利であるか不利であるか、当該組合員が賛成したか反対したかを問わず、労働協約で定められた賃金額が労働契約で定められた賃金額に優先して適用されるのが原則です(労組法16条)。したがって、労働者が賃金減額に反対していたとしても、当該労働者が加入している労働組合との間で賃金を減額することを内容とする労働協約を締結すれば、賃金を減額することができます。
労働協約の規範的効力が及ぶ範囲は原則として組合員との範囲と一致し、労働協約締結後に組合員となった者にも組合加入時から労働協約の規範的効力が及びますが、労働組合を脱退した場合には離脱の時点から労働協約の規範的効力は及ばなくなります。
労働協約が締結されるに至った経緯、当時の会社の経営状態、同協約に定められた基準の全体としての合理性に照らし、同協約が特定の又は一部の組合員を殊更不利益に取り扱うことを目的として締結されたなど労働組合の目的を逸脱して締結されたものである場合には、その規範的効力を否定され(朝日海上火災保険(石堂・本訴)事件最高裁平成9年3月27日第一小法廷判決)、賃金減額の効力が生じません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎