労働問題367 飲食店において、接客担当のスタッフに対し、お客さんがいなかったり自分の担当業務が終わったりしたら休憩していて構わないが、お客さんが入店してきたら自分の担当業務に従事するよう指示している場合、実際に仕事をしていない時間は「休憩時間」(労基法34条)として扱い、実際に担当業務に従事している時間だけを労基法に基づく残業代(割増賃金)計算の基礎となる労働時間として扱うことはできますか。
飲食店において、接客担当のスタッフに対し、お客さんがいなかったり自分の担当業務が終わったりしたら休憩していて構わないが、お客さんが入店してきたら自分の担当業務に従事するよう指示している場合は、実際に仕事をしていない時間も使用者から就労の要求があれば直ちに就労しうる態勢で待機している時間(手待時間)であり、労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間とはいえませんので、「休憩時間」(労基法34条)として扱うことはできず、実際に担当業務に従事している時間だけでなく手待時間を含めた時間全体が、労基法に基づく残業代計算の基礎となる労働時間となります。
休憩時間と手待時間との関係については、「労基法34条所定の休憩時間とは、労働から離れることを保障されている時間をいうものであるところ、原告らと被告との間の雇用契約における右休憩時間の約定は、客が途切れた時などに適宜休憩してもよいというものにすぎず、現に客が来店した際には即時その業務に従事しなければならなかったことからすると、完全に労働から離れることを保障する旨の休憩時間について約定したものということができず、単に手待時間ともいうべき時間があることを休憩時間との名のもとに合意したにすぎないものというべきである。」としたすし処「杉」事件大阪地裁昭和56年3月24日判決が参考になります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎