労働問題325 従来の一般的な判断基準とは異なる判断基準を用いて管理監督者該当性を判断する見解にはどのようなものがありますか。

 『労働法 第十版』(菅野和夫著)340頁は、「近年の裁判例をみると、管理監督者の定義に関する上記の行政解釈のうち、『経営者と一体の立場にある者』、『事業主の経営に関する決定に参画し』については、これを企業全体の運営への関与を要すると誤解しているきらいがあった。企業の経営者は管理職者に企業組織の部分ごとの管理を分担させつつ、それらを連携統合しているのであって、担当する組織部分について経営者の分身として経営者に代わって管理を行う立場にあることが『経営者と一体の立場』であると考えるべきである。そして、当該組織部分が企業にとって重要な組織単位であれば、その管理を通して経営に参画することが『経営に関する決定に参画し』にあたるとみるべきである。最近の裁判例では、このような見地から判断基準をより明確化する試みも行われている。」としています。
 また、ゲートウェイ21事件東京地裁平成20930日判決、プレゼンス事件東京地裁平成2129日判決、東和システム事件東京地裁平成2139日判決は、結論としてはいずれも管理監督者該当性を否定していますが「管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理につき、経営者と一体的な立場にあるものをいい、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであると解される(昭和22913日発基第17号等)。」とした上で、具体的には、以下の①②③④の要件を満たすことが必要であるとしています。
  職務内容が、少なくともある部門全体の統括的な立場にあること
  部下に対する労務管理上の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること
  管理職手当等の特別手当が支給され、待遇において、時間外手当が支給されないことを十分に補っていること
  自己の出退勤について、自ら決定し得る権限があること

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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