労働問題304 専門業務型裁量労働制の対象社員に対し、残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要がありますか。
専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(対象業務)として労使協定で定めた業務に労働者を就かせたときは、実労働時間と関係なく、労使協定で定めた時間労働したものとみなす制度です(労基法38条の3)。
使用者は労働者の労働時間を把握し、把握した時間に応じて算定した賃金を支払う義務を負うのが原則ですが、専門業務型裁量労働制の適用により、労働時間把握義務を免除されることになります(平成13年4月6日基発339号)。
本制度は、みなし労働時間の決定を労使自治に委ねるものである以上、専門業務型裁量労働制の適用要件を充足する限り、みなし労働時間と実労働時間が乖離している場合であっても、みなし労働時間労働したものとみなされることになります。
本制度は、労働時間をみなす制度であり、労働時間に関する労基法の規制の適用を除外する制度ではありませんので、休憩(労基法34条)、休日(同法35条)、時間外及び休日の労働(同法36条)、時間外、休日及び深夜の割増賃金(同法37条)などの規定は原則どおり適用されます。したがって、みなし時間が法定労働時間(労基法32条)を超える場合や法定休日に労働させる場合には時間外・休日労働に関する労使協定の締結・届出(同法36条)や時間外・休日割増賃金の支払(同法37条1項)が必要となりますし、深夜(22時~5時)に労働させた場合には、深夜割増賃金の支払(同法37条4項)が必要となります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎