労働問題296 事業場外みなしの適用がある営業社員について、当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合(通常は所定労働時間内に仕事が終わらない場合)は、どのように残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払えばよろしいでしょうか。
当該業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合(通常は所定労働時間内に仕事が終わらない場合)は、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」のうちの時間外労働時間に対する残業代(時間外割増賃金)を支払う必要があります。「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が何時間かは認定が難しく、事前に決めておかないと後から争いになりますので、労働者代表等との間で労使協定を締結して営業社員のみなし労働時間を定めておくとよいでしょう。例えば、所定労働時間が1日8時間の事業場において、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」が1日10時間の場合は、労働者代表等との間の労使協定で「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」を1日10時間とする旨定め、1日2時間分の残業代(時間外割増賃金)を支払うことになります。
具体的には、残業代(時間外割増賃金)の時間単価を算出し、当該賃金計算期間におけるみなし労働時間における時間外労働時間数を乗じて、残業代(時間外割増賃金)を算定します。毎月一定額の基本給等の賃金のほか、営業成績に応じた歩合給がある場合、通常の労働時間の賃金は、「基本給等の月額で定められた賃金÷一年間における一月平均所定労働時間数」だけでなく、これに「出来高払制によって計算された賃金の総額÷当該賃金算定期間における総労働時間数」を加算して算出されること(労基則19条1項7号・4号・6号)に注意が必要です。
例えば、労使協定で営業社員は1日10時間労働したものとみなす旨定められている事業場で、通常の労働時間の賃金が1000円/時、当該賃金計算期間における労働日数が21日の場合は、
時間外割増賃金単価=1000円/時×1.25=1250円/時
時間外労働時間=2時間/日×21日=42時間
時間外割増賃金=1250円/時×42時間=5万2500円
となります。
給料日には、算定した時間外割増賃金額を「時間外勤務手当」等、時間外割増賃金の支払であることが明白な名目で支払って下さい。上記の例でいえば、時間外割増賃金5万2500円を「時間外勤務手当」等、時間外割増賃金の支払であることが明白な名目で支払うことになります。
休日・深夜労働がある場合は、休日・深夜労働時間に応じて、休日・深夜割増賃金を、「休日勤務手当」「深夜勤務手当」等、休日・深夜割増賃金の支払であることが明白な名目で支払って下さい。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎