労働問題242 終業時刻を過ぎても退社しないままダラダラと会社に残っている社員がいる場合、会社としてはどのような対応をすべきですか?
残業するように指示していないのに、社員が終業時刻を過ぎても退社しないまま会社に残っているのが常態となっていて、それを上司が知っていながら放置していた場合に、当該社員から、黙示の残業命令があり、使用者の指揮命令下に置かれていたなどと退職後に主張されて、終業時刻後の在社時間について残業代(割増賃金)の請求を受けることがあります。
使用者としては、その時に帰りたいと言ってくれればすぐに退社させていた、今になって残業代の請求をしてくるのは不当だ、などと言いたくもなるかもしれませんが、残業してまでやらなくてもいいような仕事(所定労働時間内でやれば足りるような仕事)であったとしても、現実に仕事らしきものをダラダラとしていたような事案で労働時間性を否定するのは、なかなか難しいものがあり、生産性の低い在社時間が労働時間と評価されて残業代の請求が認められることも珍しくありません。
また、在社時間が長い社員から、うつ病になったのは長時間労働のせいだなどと主張され、損害賠償請求を受けることも珍しくありません。
使用者としては、終業時刻後も不必要に会社に残っている社員に対しては、速やかに仕事を切り上げて帰るよう指示すべきでしょう。
仕事を切り上げて帰るよう指示しても帰ろうとしない社員に対しては、単に口頭で帰るよう伝えただけでは足りず、現実に仕事を止めさせ、会社建物(仕事をする部屋)の外に出すのが望ましい対応です。
口では仕事を切り上げて帰れと言っていたとしても、会社(特に、仕事をする部屋)に残っているのを知りつつ放置していたのでは、無用のリスクが残ることになってしまいます。
懇親等の目的で、仕事が終わった後も社内に残っているのを容認する場合は、最低限、タイムカードの打刻をさせるなどして、労働時間が終了していることを明確にしておく必要があります。
ただ、訴訟になると、「労働時間の終了前にタイムカードに打刻するよう強要されて(上司が勝手にタイムカードを押して)、残業させられた。」などといった主張をする社員もいますので、やはり、仕事と関係のないことは、仕事をする部屋の外(できるだけ会社建物の外)で行わせるようにするのが望ましいところです。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎