労働問題165 社員の精神疾患発症に関し使用者責任又は安全配慮義務違反を理由とする債務不履行を問われて損害賠償義務を負う場合、社員の弁護士費用まで賠償しなければなりませんか。
不法行為の被害者が損害賠償を請求するために「訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」(最高裁昭和44年2月27日第一小法廷判決)とするのが、確立した最高裁判例です。
また、最高裁第二小法廷平成24年2月24日判決は、「使用者の安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償を請求するため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、上記安全配慮義務違反と相当因果関係に立つ損害というべきである(最高裁昭和41年(オ)第280号同44年2月27日第一小法廷判決・民集23巻2号441頁参照)。」としています。
したがって、使用者責任に基づく損害賠償請求か、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求かにかかわらず、社員が訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、賠償しなければならないことになります。