労働問題123 労働者が退職勧奨に応じた場合、どの時点で退職の効力が生じますか。

 退職勧奨の法的性質は、裁判実務上、使用者が労働者に対し合意退職の申込みを促す行為(申込みの誘引)をいうと評価されるのが一般的です。
 退職勧奨を申込みの誘因と評価した場合、労働者が退職勧奨に応じて退職届を提出した段階では合意退職は成立しておらず、退職届の提出等の労働者からの合意退職の申込みに対し使用者が承諾した時点で合意退職が成立することになります。
 学説では、退職勧奨を、辞職を勧める使用者の行為、あるいは、使用者による合意解約の申込みに対する承諾を勧める行為と定義する見解(荒木)もあります。
 この見解によれば、労働者が退職届を提出した時点で辞職の意思表示がなされ、あるいは合意退職が成立するため、使用者の承諾がなくても退職の効果が発生することになります。荒木先生の見解に全く異論はありませんが、裁判所は、労働者が退職の撤回を主張した場合には、労働者に有利に退職の効果が発生する時期を遅らせて判断する傾向があります。
 したがって、訴訟では荒木先生の見解に基づいて主張立証するとしても、事前の労務管理の段階では、速やかに退職を承諾する旨の通知をするなどして、退職の合意を成立させておくべきことになります。
 本サイトでは、退職勧奨が「使用者が労働者に対し合意退職の申込みを促す行為(申込みの誘引)」であることを前提として解説しています。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎

 

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